MaestroとProfesor
Maestro o profesor
皆さんはこの違いがわかりますか。訳すと、
Maestro またはMaestra は師、profesor またはprofesoraは先生 です。
わたしはスペインではたくさんのMaestros やprofesoresから学びました。
Maestros達からは踊りはもちろん、フラメンコを踊り続ける意味、意義、フラメンコを生業とする為に必要な技術や心構え、
練習生(当時のわたし)へ向ける愛情、彼らの長いキャリアから発せられる重くて深い言葉の数々…
フラメンコだけでなく、生き方を教わりました。泣かされたことも、助けられたことがたくさんありました。
彼らは全てむき出しで惜しげなく、これでもかとシャワーのように全てを見せてくれ、導いてくれました。
先生方はいい見本も悪い見本もどちらも存在しているのがおもしろかったなぁ
日本でも名の知れたスペイン人Maestrosの中には破天荒な師もたくさんいました。みんなアーティストですからね。
良いとこも悪いとこも、とにかく、やっぱりアーティストってすっごいなぁと思っています。
当時はたくさんのMaestrosたちが現役でスタジオにいました。El guïto,Manolete,Merche Esmeralda,El Pelao,La Tati,La china,El Ciro,Enrique Pantoja,Antonio Canales,Rafael Riqueni…などなどたくさん。
昔のフラメンコ界はかなりアブなく、都市伝説的な話がいろいろあります。ちょっと日本の芸能界もそういうところありましたね。
私が通っていたフラメンコの学校の校長先生(Director Joaquín San Juan)はよく言っていました。
la vida de flamenco es desordenada.
フラメンコたちの人生はとっ散らかっている。
今はもうそんな時代でなく、良くも悪くもみんな健康に気遣う、常識的な感じになっていますがね…でもそのカオスなところから、すばらしい芸術がうまれ、人を魅了するのだと思います。
脱線しましたね。
わかりやすく言うと、Profesoresとは、今現在スペイン国外踊り手として活躍中の現役バリバリの人達、という印象です。
若く、勢いがあり、次々と新しく、おもしろいパソや動きを作っていく今のフラメンコ界、時代を動かす、パワーがある人たち。
舞台やタブラオ、フラメンコフェスティバルなどに国内外を飛び回っている。教えることより踊ることの比重が高い、まさしくノリに乗っている実力者たちです。とはいえ、踊りの仕事は不安定で、いつも大きい舞台があるとは限りません。教える仕事はかなり安定した収入になります。
そんな先生たちに振付やスタイルを習いたいと思いますよね。でもそういうクラスは受ける生徒たちの基礎力、実力がないと何も学べなく、残念なことにも… また踊るのがすばらしくても、教えるのが上手くない人もいます。
基本的には振付中心、受ける方も基礎や知識、技術があって当たり前、から始まります。
もちろんなくても受けれますが、踊れる子たち中心にレッスンは進んでいきます。
彼らは小さい頃からフラメンコやダンスを習ってきているので、基本的には教えるのも上手な人はたくさんいますが、(そうじゃない天才肌の人もたくさんいます)
でも、教え方も歳を重ねていきながら、変化していくものなんでしょうね。
またその世代の仲間同士でそれぞれのレッスンに潜り込んでいたりするので、ラッキーで同じ振付がプロにかかるとちがう味になる様子は本当に見るだけで勉強になりました。
またマエストロのクラスでは、名の知れたプロたちがたくさんいました。
私が渡西した最初の頃、Maestro CiroのクラスにはSara Baras,María Juncal,Estévez….
Maestra ChinaのクラスではBelén López,La truco…
maestra María MagdalenaのクラスにはAlfonso losa,Belen Fernández…
書ききれない…まぁ、みんなプロを目指している人たちばかりだったのだから当たり前ですね。
今はスペイン人たちの生活スタイルも変わっていますが、まだその当時は、みんなホビーではなく、プロを目指してレッスンを受けていました。
さて、そんないろいろなクラスが存在するのですが、
スペイン人たちは先生をどう呼ぶのか?
基本的にスペイン人たちは日本のように肩書きで呼ぶより、名前で呼びます。
しかし長いキャリアを持つ先生たちには尊敬の意を示したいときなどに”Maestro”と呼ぶこともよくあります。大橋調べでは南米人がよくマエストロと言っているなぁという印象です。南米の文化なんでしょうね。
そんな感じなので 私は、日本でマエストロと言われて、居心地悪そうな若いスペイン人たちをよく見ました。
マエストロというのはキャリア、年齢なども関係してくるからです。前のブログでも書きましたが、成熟した人達を讃える文化があるのです。
だから若い踊り手たちにマエストロというのはどうにも気持ちが悪い、似合わないのです。
本人たちもそう思っています。なぜならもっともっと自由に…もっと成長したいと願っているからです。彼ら自身がマエストロと尊敬する人達がいます。そのマエストロたちからたくさんの教えを受け、影響を受けて、導かれ、今自分の道を切り拓いて進んでいるのを知っているからです。
わたしがいてた時代には若い先生たちが今中堅となり、若い練習生からマエストロと呼ばれているのを聞くと、厳しい世界の中で踊り手として、教え手として、人として、成長してきたんだなぁと…ほんと尊敬しています。
こういう確固たるピラミッドこそが、フラメンコの層の厚さで、トラディショナルを大切にしながら、新しくものを生み出していく力なんだと思います。個々のスタイルが確立できる自由な世界なんだと思います。